月を食べたい🌕

 夜8時、車に乗って外を眺めたら、夜空に白くてまん丸い月が低く吊るされていた。

 車は速く運転し、その白い月も後をすばやく追いかけてきていた。森の中や建物の後ろをシュッとすり抜けて追ってきた月を見て、突然

 「白くて丸い月、何でこんなにおいしくそうに見えてるのだろう」と、一瞬に思った。

 そう思う人は、わたしだけじゃないみたいね。

 中国も日本も、月になぞった食べ物を月見の時にお供えする伝統があるんだね。

 日本なら、月のような丸っこい月見団子があり;中国なら、円状でずっしりした月餅がある。

 両者がそれぞれ、冴えた白い満月、黄色っぽくてパンの色がする満月を見立てて、どちらも食欲をそそるよね。

 月餅の場合、小麦粉、油と砂糖を混ぜてこんがりと焼いた皮の中に、甘くてコクのある餡がずっしり入っている。なつめ餡、黒胡麻餡、桃仁餡(あんこにくるみ)、伍仁百果(ナッツ類とドライフルーツ)、ハス(白あんと蓮の甘露煮)など、数えきれないほど種類があって、どちらもやみつきになる。

 そして、もう一つ月に関連する食べ物を思い浮かべた---月亮饃(月パン)

 小麦粉で作った、もっちりで平たく円形のパン。白くてツルッとした表面が明るく冴えた満月を連想させるため月の名前がついた。その中に調理した野菜たちやお肉をはみ出すほどたっぷり入れて食べる。それが、農業で盛んできた中国河南省の風味だ。

 白い、或は黄色いで丸っこい、夜空にある満月はなぜか人にいろんな思いをさせる。

 今のわたしは、ほんとに月を食べられる天狗のことを羨ましく思ってならないのだ。